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2003年春季に強い硫化水素臭を伴う堆積物が白川沖から南南西に分布していた
(田中ほか、2004)。この分布は、同時に行った水質測定から明らかになった潮目にも一致していた
(図1)。1年後には硫化水素臭は弱くなり(図2)、濃度のピークも低くなっていた
(図3)ことから、有機物の供給量が変化したと判断される。また、高い値の分布が、潮目に一致し、含泥率の分布に類似している。このことから、粘土粒子に付着して濃集していると推定される
(図4)。さらに、高い値の分布が点在することから、有機物の濃集に、溶存有機物の集積と泥の再移動の渦流が関与していると考えられる。これは、滝川によるシミュレーションの結果とも一致する この間、白川および緑川沖で砂の含有量が増加していた
(図4)。沖に向かって増加率が減少し、底面流速は浸食領域の最低速度を超える
(柿木ほか、2001a)ことから、沿岸漁場の覆砂あるいは熊本新港北側の干潟からの砂粒子の再移動と考えられる。後者の推定は、地形変化シミュレーション(柿木ほか、2001b)からも支持される。
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今後、生息域ならびに生息条件が限定される底生有孔虫を用いることで、粒子の移動メカニズムや過去の水質の復元が可能になる。 |
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まとめ : 有孔虫の研究は有明海の人為的環境変化を解く鍵になる |
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1.物理的状態(堆積物表層の粒度)や化学的状態(有機物負荷)は短期に変化する。
瞬間の測定も重要だが、平均値を得ることも必要。
2.中長期の傾向を把握するためには、観測記録と比較のできる環境を微小生物の化石を解析して復元しなければならない。
(1)年間に厚い地層が堆積する地点で乱れのない柱状試料を採集 (2)高精度な年代測定
(3)特定の環境に生息する微化石の解析
3.有孔虫の分布と有機物供給量との関係から、有機負荷の変遷を復元できる
4.底層流など堆積物の再移動の研究に、分布が限定される種の遺骸の分散を用いることで
粒子の移動に関わるシミュレーションの検証が可能になる。 |
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なお、研究を進めるにあたり、熊本大学沿岸域環境科学教育研究センターの島崎英行技官および熊本大学大学院自然科学研究科の平城兼寿氏、田中正和氏、熊本大学理学部地球科学科の西村啓介氏には調査をお手伝いいただいた。熊本大学沿岸域環境科学教育研究センターの滝川 清教授、熊本大学理学部地球科学科の長谷義隆教授、松田博貴助教授、小松俊文博士、熊本大学大学院自然科学研究科の長谷川四郎教授、鳥井真之博士からは貴重なご意見をいただいた。 |
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*有明海表層堆積物画像データベース
(NPOみらい有明・不知火および沿岸域センターより共同出版)
秋元が中心になって、有明海の表層堆積物を画像データベース (CD1枚)としてまとめ、解説
(冊子)と堆積物分布図とともに発行しました。残部が若干あります。国、地方自治体、研究・教育機関、企業でご希望があれば、滝川教授
(taki2328@kumamoto-u.ac.jp)あるいは秋元
(akimoto@sci.kumamoto-u.ac.jp)までご連絡ください。 | |