現在、有明海・八代海の水産資源は環境の悪化により衰退の一途にある。また、両海域の生物多様性は減少し、両海域に特徴的で学術的にも貴重な種が急速に失われている。さらに、外来種の侵入による遺伝子汚染の問題も顕在化してきた。今後、現状に則した水産資源の新たな管理と多様性保全技術の開発が急務であるが、実効性と持続性のある技術の開発には、両海域の生態系の理解が不可欠である。

本研究プロジェクトでは、

1. 生物多様性の解析を通して、両海域の生態系構造を解明する。そのために、両海域に優占する種や特異な種（有明海特産種）を中心に、遺伝情報から生活・繁殖様式などの詳細な解析を行う。
2. 水産上重要な生物種を中心に、環境悪化に対する生物の応答情報を明らかにすると共に、養殖技術の開発や先端マリンバイオテクノロジーの導入により、水産資源の保全・増殖をおこなう。これらの研究により、沿岸域環境における生物多様性と水産資源の保全研究の世界的な研究教育拠点の形成をめざす。

　有明・八代海域は代表的な閉鎖的内湾であり、世界的にも希有な数々の特徴を有する。これら海域の環境特性の保全と持続的な利用を調和させるには、この地域が直面する“環境と防災”に関する総合的研究を、緊急かつ積極的に行うことが不可欠である。
本研究は、環境と防災対策の調和を追求する新たな環境保全工学の教育研究分野を創出し、研究拠点形成を行う事を目的とする。その方策として、有明・八代海域を対象として、閉鎖性海域環境の複雑なメカニズムを物理的、化学的、生物的に多側面から解明し、環境変化の評価・予測システムの構築を行い、環境と防災対策の調和を追求する。本研究過程において21世紀における持続可能な地域社会形成（Life ware）のための科学的展開と、これに必要な人材を育成し、世界最高水準の研究教育拠点の形成を目指す。

主な研究のサブテーマは下記のようである。

1. 海域・干潟環境評価とその改善維持方策
2. 流域圏からの干潟環境負荷の評価とその削減策
3. 環境のモニタリングと環境・防災情報システムの構築、海象災害方策